お知らせ

相続時の配偶者の権利を大幅に拡大!~改正民法(相続法)のポイント~

約40年ぶりとなる民法(相続法)の改正が成立しました(平成30年7月13日公布)。
改正では、 高齢化の進展によって、相続開始時における配偶者の年齢が相対的に高齢化していることを踏 まえ、残された配偶者の生活に配慮する等の観点から、配偶者の居住の権利を保護するための 方策等が盛り込まれたほか、遺言の利用を促進し、相続をめぐる紛争を防止する等の観点から、 自筆証書遺言の方式を緩和するなどの改正が行われました。

1.配偶者が自宅に住み続けることができる権利を創設

配偶者が自宅に住み続けることができる権利(居住権)は、「配偶者居住権」と「配偶者短期 居住権」とに分けられます。
(1)配偶者居住権  配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物を対象として、終身又は一定期間、 配偶者にその使用又は収益を認める法定の権利です。
遺産分割における選択肢の一つとして、以下のことができます。
① 配偶者に配偶者居住権を取得させる
② 被相続人が遺贈等によって配偶者に配偶者居住権を取得させる
なお、配偶者居住権の価値評価にあたっては、複雑な計算が必要です
(※) ※法務省HPの「配偶者居住権の価値評価について(簡易 な評価方法)」をご覧ください。
詳細は、法制審議会民法(相続関係)部会第19回会議(平成29年3月28日)開催(内の資料「長期居住権の簡易な評価方法について」をご覧ください。
(2)配偶者短期居住権
配偶者短期居住権は、配偶者の相続財産でないことを前提にした建物の短期の利用権で、次 のような利用を想定しています。
① 配偶者が居住建物の遺産分割に関与するときに、配偶者が相続開始の時に被相続人所有 の建物に無償で居住していた場合、遺産分割によりその建物の帰属が確定するまでの間又 は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間、引き続き無償でその 建物を使用することができます。
② 遺贈などにより配偶者以外の第三者が居住建物の所有権を取得した場合や配偶者が相続 放棄をした場合など上記①以外のケースにおいて、配偶者は、相続開始の時に被相続人所 有の建物に無償で居住していた場合には、居住建物の所有権を取得した者は、いつでも配 偶者に対し配偶者短期居住権の消滅を申入れをすることができますが、配偶者はその申入 れを受けた日から6か月を経過するまでの間、引き続き無償でその建物を使用することが 認められます。

2.夫婦間の自宅の贈与等を保護する制度の創設

相続においては、民法の特別受益(第903条)が問題になる場合があります。民法と相続税との相続財産の範囲の違いに注意してください。
【第903条】(特別受益者の相続分)
1 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは 生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財 産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条(第900条法定相続分) の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその 者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受 贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関 する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。

3.その他

(1)財産目録のパソコン作成が可能に!  従来、自筆証書遺言は、全文を自署(手書き)する必要がありました。改正では、要件が緩 和され、遺言のうち財産目録についてはパソコンで作成することが認められました(ただし、各ページに自署押印が必要)。
また、封をしていない自筆証書遺言において、法務局で保管する制度も創設されます。
(2)預貯金の仮払い制度  従来は、相続財産となる預貯金債権は、遺産分割の対象に含まれ、共同相続人による単独での払戻しが認められませんでした。改正では、預貯金債権の一定金額について、単独での払戻 しが認められます。また、仮払いの必要性があれば、家庭裁判所が仮払いを認める制度も創設 されます。
(3)相続人以外の親族の貢献に考慮  従来は、相続人の妻など相続人以外の相続人の親族が、被相続人の介護を尽くしても、相続 財産を取得することはできませんでした。改正では、被相続人の介護を行っていた相続人の妻 などが、一定の要件を満たせば、相続人に対して金銭の支払いを請求できるようになります(対象は親族に限られる)。
【参考】 法務省HP「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html