お知らせ

増税前に確認しておきたい消費税計算の基本


(1)個別対応方式と一括比例配分方式

個別対応方式は、「課税売上高のみに対応する課税仕入れ」を全額控除でき、「課税売上高・ 非課税売上高に共通して対応する課税仕入れ」については、課税売上割合に応じて控除するこ とができますが、「非課税売上高にのみ対応する課税仕入れ」は控除することができません。
一般に、「非課税売上高にのみ対応する課税仕入れ」が多い事業者は少なく、「課税売上高のみに対応する課税仕入れ」の割合が高くなる傾向にあり、個別対応方式のほうが、一括比例配 分方式よりも、納税額が有利になる場合があります。
ただし、課税仕入れ等を次の3つに区分して計算しなければなりません。
①課税売上高にのみ対応する課税仕入れ
②課税売上高・非課税売上高に共通して対応する課税仕入れ
③非課税売上高にのみ対応する課税仕入れ
一括比例配分方式は、課税仕入れにかかる消費税額の全体に対して課税売上割合を乗じて計 算します。個別対応方式のように、課税仕入れ等を3つに区分する必要はありません。
しかし、前述の個別対応方式に比べて、一般に、非課税売上高が多い事業者を除けば、一括 比例配分方式のほうが納税額は不利になる場合があります。  個別対応方式と一括比例配分方式それぞれの計算方法の違いによる納税額の差異を知るため には、本編で述べたように、各課税仕入れを課税売上高に対応するもの、非課税売上高に対応 するもの、課税売上高・非課税売上高に共通して対応するものに区分する必要があります。また、10月以降は、複数税率となりますので、さらに事業者の手間が増えることになります。

 (2)軽減税率実施後の税額計算の方法

軽減税率制度のもとでは、基本的には、税率の異なるごとの売上及び仕入れを記帳し、これ を基に、税率ごとの売上総額及び仕入れを算出して売上税額及び仕入税額を計算することになります(改正法附則34②)。

(3)簡易課税制度の「みなし仕入率」の見直し

消費税の軽減税率導入を見据え、平成30年度税制改正において簡易課税制度が見直され、農 林水産業のうち「食用」のみなし仕入率が70%から80%に引き上げられます。
本改正は、2019年10月1日を含む課税期間から適用されます。ただし、当該課税期間のうち 10月1日前までの期間について適用されることはありません。

   現行 2019年10月から適用
  適用上限(課税売上高) 5,000万円  5,000万円
   みなし仕入率   卸売業 90%(第1種事業)  90%(第1種事業)
小売業
80%(第2種事業)  80%(第2種事業)
農林水産業(食用)
70%(第3種事業)  80%(第2種事業)
農林水産業(非食用)  70%(第3種事業) 
鉱業、建設業、製造業
料理飲食業等 60%(第4種事業)  60%(第4種事業)

金融業及び保険業、運輸・通信業
サービス業

50%(第5種事業) 50%(第5種事業)
不動産業 40%(第6種事業 40%(第6種事業)
現行では、売上と仕入れに適用される税率は同一のため、「みなし仕入率を用いて計算した仕入税額」に税率の違いによる区分は必要ありません。
しかし、軽減税率の導入により、例えば、飲食店であれば、売上(外食)は10%、食材の仕 入れは8%の税率になり、食品スーパーの場合は、売上(飲食料品)は8%、包装資材・水道 光熱費・家賃などの課税仕入れは10%になるなど、売上に適用される税率と仕入れに適用され る税率が異なるケースが発生します。
今回の見直しは、「農林水産業(食用)」において、売上は軽減税率で、種子・農薬・機具な どの課税仕入れの大半が標準税率になることに対応したものと考えられます。
複数税率制度のもとでの簡易課税制度においては、売上又は仕入れに複数の税率が適用され る可能性のある業種について、業種区分を細分化し、その細分化した業種ごとにみなし仕入率 を設定する必要があるといわれており、今後も簡易課税の「みなし仕入率」が見直される可能性が高いといえます。
また、従前から課税売上高5,000万円以下という基準についても、議論のあるところから、同 時に基準の引き下げが検討される可能性があります。

(4)簡易課税制度の届出の特例

2019年10月1日から2020年9月30日までの日の属する課税期間において、課税仕入れ(税込み)を税率ごとに区分して合計することが困難な中小事業者(基準期間における課税売上高が 5,000万円以下)は、簡易課税制度の適用を受けようとする課税期間中に簡易課税制度選択届出 書(軽減様式通達第1号様式※)を税務署に提出した場合、届出書を提出した課税期間から簡 易課税制度の適用を受けることができます(改正法附則40①)。
なお、当該特例によって簡易課税制度を適用する場合に提出する簡易課税制度選択届出書は、 2019年7月1日から提出することができます(改正法附則1七の二、40③)
※この場合の届出書の様式は、一般的な場合に用いる様式通達第24号様式ではありません。