お知らせ

期中に役員給与を減額せざるを得ないときの注意点

定期同額給与や事前確定届出給与は、「やむを得ない事情」がないにもかかわらず期中に減額 すると、原則として、その一部又は全部が損金算入を認められません。したがって、期中に役 員給与の減額を検討するような事態がないよう、期首に前年実績、当期の利益計画、借入元本 返済を含めたキャッシュ・フローなどを踏まえて役員給与の額を決めることが重要になります。

1.法人税法が減額を認めている事由

会社経営の事情から役員給与を減額する事由(やむを得ない事情)には、具体的に次のよう なものが考えられます。 ① 地位の変更(常勤から非常勤、取締役から監査役など)、役位(社長、副社長、専務、常務など)の変更による減額
(※1)
② 会社や役員が不祥事等を起こしたことによる一定期間の減額
③ 入院加療等により職務執行が不能になったことによる入院加療中の減額
④ 主要な販路の喪失や主要な取引先の倒産などによって事業規模を縮小するための経営改 善計画に基づく減額
⑤ 経営状況の著しい悪化から経営改善計画に基づきリストラせざるを得ないような状況における減額
(※ 2)
一般的には①〜③は「臨時改定事由」として、④、⑤は「業績悪化改定事由」として、減額 改定が認められると考えられますが、いずれもその実態が問われることになります。

(※ 1)職制上の地位の変更等(法人税法基本通達9-2-12の3)
「役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむ を得ない事情」とは、例えば、定時株主総会後、次の定時株主総会までの間において社長が退 任したことに伴い臨時株主総会の決議により副社長が社長に就任する場合や、合併に伴いその 役員の職務の内容が大幅に変更される場合をいう。
(注)役員の職制上の地位とは、定款等の規定又は総会若しくは取締役会の決議等により付与されたものをいい ます。 (※2)経営の状況の著しい悪化に類する理由(法人税法基本通達9-2-13)
「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは、経営状況が著しく悪化し たことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいうのであるから、法 人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれないこ とに留意する。

2.減額に必要な手続きや保存すべき書類等

(1)必要な手続き  臨時改定事由や業績悪化改定事由によって役員給与を減額する場合、定期同額給与について -3- は、税務署へ書類等を提出する必要はなく、社内手続きのみによって減額を行います。  事前確定届出給与については、社内手続きの他、臨時改定事由が生じた日から1月以内又は 業績悪化改定事由により株主総会等でその改定の定めをした日から1月以内に「事前確定届出 給与に関する変更届出書」を税務署に提出する必要があります。
(2)整備・保存すべき証拠書類 〇役員就業規程など役員の役位や業務が社内で定められていることを説明できる書類 〇役位の付与を決定した株主総会や取締役会の議事録等 〇役位の変更を取引先や金融機関など対外的に案内した文書 〇不祥事等を客観的に説明できる書類 〇経営改善計画書 〇減額決議をした株主総会や取締役会の議事録等 〇減額後、一定期間経過後元の支給額に戻した場合には、元に戻す決議をした株主総会や取 締役会の議事録等
(3)減額改定する際の議事録記載例

第〇号議案 取締役の報酬額を改定する件  議長は、経営改善計画の必要性から取締役の報酬を減額せざるを得ない状況にある旨を詳 細に説明し、平成30年9月分以降から各取締役の報酬額を下記の通り改定する旨を提起し、 その承認を求めたところ、全員異議なくこれを承認可決した。