鹿児島川内支店代表 浮田ブログ

不況に打ち勝つ経営戦略~鹿児島建設新聞掲載記事より~

企業存続へ-M&Aで活路を見いだせ!
========================================================行政改革が進み、公共投資が年々削減される中で、地元建設業を始めとする中小零細企業は今、生き残りをかけた経営を強いられている。これらに追い打ちをかけるかのように、中小企業金融円滑化法の期限切れ、消費税増税などが矢継ぎ早に決まり、取り巻く経営環境は一段と厳しさを増してきている。企業はこの状況をいかに打開すればよいかー。税理士法人神園会計事務所の浮田直宏所長に話を聞いた。
========================================================
■早急に対策講を
中小企業金融円滑化法の期限が切れるのは、建設業にとってもかなり大きな出来事だと言えるでしょう。これは一種の徳政令のようなもので、返済を猶予してもらったり、リスケに応じない場合、銀行は金融庁に報告しないといけなかったものが、今後は不要となり、銀行側もかなり対応が変わってくるはずです。
対応策として、まずは期限が切れる前に、早急に資金が必要でない場合も、借り換えをして返済期限を延ばしたり、1ヶ月あたりの返済額を減らす交渉をしたりすることが必要だと考えます。

■企業の成長には”経営者の営業力”が必要
企業が成長しないことは、即倒産へ向かうことになります。まず何よりも大事なのは、売り上げを確保すること。そのためには、今の仕事をベースに、いかに新たな仕事をつくるか、新たなお客様を獲得していくかなど、常に何らかの手を打っていかねばなりません。そして最後にものをいうのは、営業力です。特に中小零細企業では、経営者の営業力にかかっているといっても過言ではないでしょう。
業績を安定させようとするあまり、何もしないということは現状維持ではなく後退です。新たな何かを見いだし、挑戦することが大事で、やると決めたことを継続することは極めて重要と考えます。

■M&Aで競争力向上
建設業は、他の業種に比べると業界再編が行われていない業界の一つで、特に地方では中小零細企業を中心に廃業による企業の減少が目立っています。これを踏まえると、建設業も他の業種と同じようにM&Aを活用する必要性がありそうです。建設業にはさまざまな工事業があり、今まで外注していたものをM&Aにより自社で行うようにしたり、またM&Aによる企業体質強化、新規事業の立ち上げ、事業拡大といったシナジー効果でさらなる差別化を図ることもできます。
自社で人を育てる時間も余力もない企業が多いので、お金で時間を買うという意味で有効だと考えます。経営者である方々が集まって集合体を作ることも競争力を高める有効的な手段。M&Aも生き残りの一つの方策といえるでしょう。
従業員の競争意識ややる気を向上させるために、成果型の給与体系を再構築することをおすすめします。特に建設業界のように厳しい業界では、固定費である人件費にそれほど投資できないため、給与のパイは固定して、賞与で評価に対して分配するやりかたがよさそうです。

■従業員のやる気向上へ成果型の給与体系構築を
建設業の黒字企業の平均でも売上に対する経常利益率は2~3%しかなく、企業全体で月10万円(年間120万円)給与のパイを増やすだけで、その上昇分をカバーするため4000万円~6000万円の仕事をとらないといけなくなります。年齢にかかわらず同じ業績をだせばおおよそ同じ賞与でないと不公平となるので、業績の悪い年に評価を上げても賞与が少なくならないよう人件費については、給与は生活給の最低限にして賞与の部分が多くなるようにし、分配が業績の悪い期も不公平のないように出せることが重要です。
一方で、企業存続が一番大事で倒産すれば元も子もなく、売上に直結する営業経費や広告にはできるだけ投資し、また、内部留保もしていかねば今後何があるかわからないので、人件費の配分は押さえざるを得ません。従業員のために給与を上げてやりたい気持ちも大事ですが、常に売り上げや適正利益の確保ができる見通しがないときには安易に上げるのではなく、最大の固定費である人件費には注意を払うことが肝要です。今のパフォーマンスで給与を評価し、過去にどれだけ貢献したのでなく、今どれだけ貢献しているかという視点が大事となるでしょう。

■企業存続こそが社会貢献
最近後継者問題が急増しています。息子さんがいても県外で大手企業に勤めていたり、また、この厳しい経済環境では経営者に向かないので継がせられないという声も耳にします。従業員に継がせようと思っても、そこはやはりサラリーマン。借入金等の連帯保証や担保提供をためらい継ぐ人がいなかったり、株を買い取る資金がなかったりして継ぐことができないのが現状です。そこで経営者の方の退職後の資金確保や、従業員の方々の雇用を確保するためにも考えられるのがM&Aです。
経営者の方にとっても、M&Aによる会社売却は通常の廃業、清算よりは実入りも多く、企業も存続させることができハッピーリタイヤの一つになるでしょう。働く場の少ない地方にとって企業を維持することはそれだけで社会貢献。このような後継者不在の企業経営者のお手伝いとしてのM&Aにわれわれも今後力を入れようと思っております。やむなく企業を閉めるのではなく、できるだけ企業を存続できるお手伝いをしたいと考えております。
***この記事は、平成25年1月1日 鹿児島建設新聞に掲載されました。***